ほんとうの選択
ボロレシート
夏の真ん中ぬるい朝
今日から俺を養ってくれ
彼女へ平然と懇願した
散歩して昼寝して
本だけ読んでりゃ
月日の感覚なんて
ふんわりきえる
ニートがタバコ吸ってんじゃねぇよ
怒鳴られたとしても
だって暇なんだもん
すっぱりひらきなおる
ああ
まったく
俺は何も分かってないよ
ほんとうは
逃げられないのだから
職場まで彼女を送り
大人しく職安に通い
手抜きした履歴書
ポストにぶん投げる
たまに貯金箱から小銭をくすね
アイスを貪り
公園のベンチでひとり
春と修羅の朗読会
今日何してたの
訊かれるのが恐くて
コインランドリーでかくれんぼ
すっかり痩せた財布を握り
コンビニでスイーツ買って
面接落ちたのごまかした
前より念入りな愛撫に紛れる
自分本位な執着心
ああ
まったく
貴女は無駄に生きてるよ
ほんとうは
逃げてもいいんだから
秋の始まり涼しい夜
明日からまたのんびり働くんだ
彼女の柔らかな頬に触れた
返された笑みは
待ち望んでいたもの全てで
守られているのが
どちらか明らかだった