座礁
nemaru

フェイスブックで
懐かしい名前をたどっていくと
変わり果てたひとに行き着いた

整形し尽くしても
残る面影に

そうなりたかったんだ
って笑う

ドバイの富豪のしっぽ
すっぽぬけないように
必死の形相で
抱きしめている

おんなじ教室から出て行ったのに
わからないもんだね

つまんない毎日だよ

ほしいものに手をのばすひとが
ひどくぶざまに見えて
何にもさわってこなかったから

みんな子どもを抱っこして
「幸せそう」にしているのに

私からはドバイのほうが
近くに見えて

動きすぎた君と
こらえすぎた私はまだ
おんなじ放課後にいる気がする

粘っこい重油にまみれた
やせほそった海鳥と
沖で座礁した
外国籍のタンカーが
なぜだか
交配をこころみていた

そんな馬鹿げたころがあったねえ

君は勝手にぶぐぶぐ沈んでいって
私は体温調節ができなくて
震えるだけだった
あの季節

君は欲張りで持ちすぎて
私はこわがりで持たなすぎて
それでも
変てこなバランスで
たしかに繋がっていた

同じぐらいの大きさに生まれていたら
抱っこして
ここらへんに隠れて
「幸せそう」にしていられたのに



そうなりたかったんだ
って

笑う


自由詩 座礁 Copyright nemaru 2014-10-13 00:57:05
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