行列の出来ない店で
イナエ

公道から駐車場に車を入れる
「いらっしゃいませ」の声を聞き流して
雑誌架から適当に雑誌を抜き出し
窓際から店の中央へ視線を流して
空席を見付け 椅子を引いて座り込む

盆に水とおしぼりを持ってきた店員に
「日替わりランチ」と声を掛け
雑誌を広げる

遠くの席から投げてくる視線を感じ
目を上げれば隣のおじさん
店員にランチ皿を並べさせながら
椅子を引いて 叩く
こちらに来いという合図

コップと雑誌を持って移動
「何時もここ?」と声を掛け
引かれた椅子に腰降ろす
「うん」
サラダを箸でつまみ上げ返事は一言

運ばれたランチを食いながら
「美味しいの?」
「喰ってみれば分かるさ」
「なるほど」
後は無言で飯を食い
「お先に」と言って出ていく

取り残されてひとり
雑誌を眺め 箸で丸めためしを食う
客が来る度
上目遣いで記憶の顔と照らし合わせて


自由詩 行列の出来ない店で Copyright イナエ 2014-10-11 22:16:28
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