きみから奪う
本木はじめ


真夜中に発光している緑、緑 あの日の電話ボックスはどこ?


信号機変わる直前走り出す少年少女のような青空


古本屋に眠り続ける文庫本 赤子のきみが手にとる日まで


いやらしい意味じゃないんだほんとうに忘れられないきみの後味


前髪を鋏で切り揃えるときによぎる海とか地平線とか


雪原に蝋燭ひとつ立っていてあとはあなたのイメージ任せ


煙草とか吸ってる場合じゃないんだよきみの家が燃えてる


「痛烈」を置き換えるなら「はっか飴」嘘から本音を吐き出す僕ら


出ることが出来ない部屋にひとりいて天窓を埋め尽くすきみの合図


ろば、レモン、きりん、ライオン、ゆり、リバー ラ行消えると困る方々


まだ眠い昨日の夢と今日の夢繋ぎ合わせるだけに目覚めて


霜の張るフロントガラス前にして立ち尽くしてる五分後の僕


タクシーの運転手から説かれてる一期一会の大切さとか


まだ誰も来ない職場で神様に愚痴を言いつつ榊を替える


ぞろぞろとみんなが出社してくれば明るい笑顔で交わすお早う(ございますなぁ)


高速の行き交うひかり眺めてるきみの瞳が明滅してる





短歌 きみから奪う Copyright 本木はじめ 2014-10-11 17:49:17
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