ひかり かたむき
木立 悟
空に向かって融けてゆく
指のかたちの切る花
切る花
空に向かってかがやく花
鏡に映る 名前の無いもの
欲めると同時に満たされるもの
すぐに消える言葉の背を
長い長い夢の跡を
辿りつづける曇りの手
冷たい光のなかの花
数え切れない霧の柱
窓から径へ落ちる白煙
ひたすらひたすら地を睨む風
二層に分かれた
古い水と新しい水を一度に呑み干し
光の傾きを測っている
想いの到かなさを見つめている
此処を消し去る力が降り
全てを奪われ残される時
何も持たないおのれひとりが
全てを発する穂であるように
ふいに呼ばれた名前は積もり
消えつづける夢の代わりに
開かない門を護っている
灰の光を敷きつめている
陽に細める目のなかに
花はゆらりと増えてゆく
霧の濃淡が描く径
午後の行方に重なってゆく