ひかり かたむき
木立 悟





空に向かって融けてゆく
指のかたちの切る花
切る花
空に向かってかがやく花


鏡に映る 名前の無いもの
欲めると同時に満たされるもの
すぐに消える言葉の背を
長い長い夢の跡を
辿りつづける曇りの手


冷たい光のなかの花
数え切れない霧の柱
窓から径へ落ちる白煙
ひたすらひたすら地を睨む風


二層に分かれた
古い水と新しい水を一度に呑み干し
光の傾きを測っている
想いの到かなさを見つめている


此処を消し去る力が降り
全てを奪われ残される時
何も持たないおのれひとりが
全てを発する穂であるように


ふいに呼ばれた名前は積もり
消えつづける夢の代わりに
開かない門を護っている
灰の光を敷きつめている


陽に細める目のなかに
花はゆらりと増えてゆく
霧の濃淡が描く径
午後の行方に重なってゆく

























自由詩 ひかり かたむき Copyright 木立 悟 2014-10-11 10:22:58
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