この世界のまんなかは
佐藤承夕



太陽が回ってないとわかってから
宇宙に中心はないとわかってから
世界は途方もなくちっぽけになった

地図をネットで見てみると
あの長い長い上り坂も
息を切らして走ったグラウンドも
人ごみが詰まった街の交差点も
手のひらサイズに映ってる

小さな窓から見える景色が
この世界のすべてじゃない
小さな窓から聞こえる音が
この世界の声じゃない

鏡の向こうで笑う私が
私のすべてじゃないように
小さな窓へ綴る言葉が
私の心のすべてじゃない

私の瞳に映るあなたが
どれだけあなたを写してるのか
あなたの瞳に映る私が
どんな姿で映っているのか

わからないしわかれない
わかれないけどわかりたい
意味や理由を探しても
どこにも答えはありはしない

理解したくてできなくて
その平行線の向こうから
必死に伸ばす手のひらに
いつから理屈を欲しがった?

太陽が回ってないとわかってから
宇宙に中心はないとわかってから
世界は途方もなくちっぽけになったけど

意味も理由もない私に
差し出された手のひらの上に
世界のすべてが詰まってると
小さな手と手の繋がる場所に
世界のまんなかがあるのだと
時々信じたくなるんだよ

小さな世界の小さな窓を
そっとポケットに閉じこめて
私は世界を歩いてく





自由詩 この世界のまんなかは Copyright 佐藤承夕 2014-10-08 00:43:34
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