君
萩
きみはきみの重ねた日々を
だれかにあげることはできない
きみの苦痛を
ひとに与えることはできない
つらくて寒くてさびしい朝のこと
きみだけが知っている
ひとりで知らない街に潜り込んだとき
きみは自由で胸が震えたね
ひとりで帰路を踏み
立ち止まって肩を震わせたね
きみはきみだけのものだ
きみの気持ちなんかだれもわからない
きみの歓びや幸いもわからない
きみだけに与えられたいつくしみを
だれかに降らすことはできない
きみはきみを支配し
きみのために豊かに泣き、ほほえみ
怒りを燃やしていて
かなしみに歪みながら
ずっと燃えていて
(140610)