たらと
opus

真実は黙殺される
それは政治的な意味で
大なり小なり

きらきら光る
湖畔で
金色の髪の少女が
狼の首を捻る
狼の口から
(舌が出ている)
さらさらと川に
血が揺蕩う

それを
その狼の魂が見ている
魂となった彼には
彼女の魂の姿が
見える
それは
まるで泥だらけの
蜘蛛

少女は
無表情で
その死体を蹴り飛ばす
狼の体は
トンと跳ね
川の流れに含まれる

後ろで
小さく悲鳴があがる
見ると
不細工なそばかすだらけの
牛乳瓶のような眼鏡をかけた
髪がボサボサの少女が

金色の少女は
微笑を浮かべ
そばかすの少女に近寄る
そばかすの少女の顔は
青白くなり
顔を引きつらせているが
恐怖で竦んで
体が動かせないという
様子

金髪の少女が
そばかすの少女に
ゆっくりと
静かに
抱きつく
まるで包むように

「何故あんな事を?」

そばかすの少女の耳元で
そっと囁く

「知らない」

「何それ?」

すると金髪の少女の
腹部にギュッと
締め付けられるような痛みが
金髪の少女は
お腹を抱えるように
蹲る

「理由も無く俺を殺したのか?」

そばかすの少女の体を
轟々と唸りながら
焔が包む
その瞳は
キッと
金髪の少女を睨みつける

「ごめんなさい」

そう言って、
向けられた
金髪の少女の顔には
笑みと涙が浮かんでいた

そばかすの少女の顔が
感情を孕んだ
歪みを見せた
そして、
そばかすの少女の体が
霧散して弾け飛んだ

金髪の少女は
口から血を一筋、
たらと流し
その場に倒れた



自由詩 たらと Copyright opus 2014-10-04 20:20:34
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