言葉と思い
……とある蛙

言葉に表せない思いは
ため息で足元に落とせばよい
言葉に表しても伝わらない思いは
自分で口を開けて呑み込めばよい

いつも思いを言葉で包み込もうとした
言葉に包まれた思いは変色してしまい
自分の手の平にあった思いとは
随分違ったものになってしまう。

最近女房が言う
詩を書くのなら
歌になる詩を書いて欲しい
言葉だけでは嘘になってしまう

所詮という言い訳を何回使ってきただろう
なるようにしかならない
と いつも言ってはいなかったか
耳元で囁く者など皆無だったのに
女房は呟く

言葉だけでは嘘になってしまう。
嘘に聞こえてしまう
詩を書くなら
歌になる詩を書いて欲しい

心は全てアクビの中に包まれ
退屈の中に包まれた心は
突然の現実に直面して
口から飛び出して言葉になる。

しかしその言葉は心も思いも包み込めない
とても包み込めずにいつも綻びから
破けている




現実の景色の陰影がハッキリしすぎて
陽の光の端に自分の影を踏む
景色の中に比べ随分と曖昧な影だ
まださようならを言えるわけもなく
違う言葉を吐き出すしかなく
彼女の要望に応えられる日は
このままでは何時までも来ないかも知れない。

だから、書き続ける。


自由詩 言葉と思い Copyright ……とある蛙 2014-10-04 13:14:30
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