◎ほうずき
由木名緒美

森羅万象の奥行きを潜り
泡立つ呼吸音に身を委ねる
壊さなければ訪れない静寂に
あてがった指 時間を悔やんで
包まれた喪服の相容れない微粒の黒
引き千切って 逃げ出すのもいい

やがて更新される切実な弁論は
現世利益にあやかって
この身を解けば 合意に満たされる
二度目の彼岸で待ち合わせたあなたと
夢の素描画を交換するだろう
まだ来ぬ各駅列車
その飛び去る車窓のひとつひとつに
月の滴をまとった実が瞬いていて
脈打つ前世がいっせいにほころぶ
午前零時を待ち焦がれている


自由詩 ◎ほうずき Copyright 由木名緒美 2014-10-03 23:28:59
notebook Home 戻る