使命
葉leaf




役人になった友人がいくらか出世して久しぶりに故郷に帰ってきた。農家を継いだ私は果物などを振る舞って、彼の話をゆっくり聞いていた。短く整えられた髪の下に、昔ながらの親しみやすくよく変わる表情を浮かべて、彼は朗らかに話し始めた。俺もさ、初めは本当に下っ端で、遣いっ走りばっかりやってたんだ。でも最近になって大きな都市計画をまかされてさ、それで自分がどんどん非情になっていくのを感じるようになったんだ。確かにやりがいのある仕事だけれど、その分些細なことをたくさん切り捨てていかなくちゃならなくなった。大きなことをやるためには私情にこだわっていられない。反対する住民だっているけど、俺にはこの都市計画を遂行する使命があるんだ。反対住民の側に立つことはできない。この使命ってのが厄介でさ、俺は使命のためのただの手段に過ぎないし、なんか昔持っていた小さな共同体の中での温かい人間的なつながりや気遣いをどんどん失っている気がする。俺はもう人間じゃないのかもしれない。人間ってのは何かの手段ではなくて、それ自体尊い目的だったはずなんだ。それが今じゃ使命を持った機械、目的を持った機械だ。そのためには繊細で感じやすい自分ってものを殺さなくちゃいけなくなった。なんかそれが悲しくてさ。彼は果物の皿を一つ平らげ、お茶を満足げにすすりながら、そんなことをこぼした。自分の中の余分なものを軽快に切り捨てていくかのように、彼は淡々と話した。それ以外にもたくさんのことを話したが、私の記憶にとりわけ残ったのは以上のような話だった。

だが、悲しいと言っている割に、彼は溌剌として、生気に満ち溢れていた。学生時代の淀んだ雰囲気はまったく払拭されていた。私は思ったのだった。彼は初めて世界から愛されたのだ、と。学生時代、あれだけ愛を渇望していた彼が、やっと世界から必要とされ、世界から好意を示され、世界から重要な贈り物をもらった。彼の使命は彼に対する世界からの愛そのものであって、それは彼を強く束縛すると同時に彼を大きく満たし、彼の誰かから求められたいという渇望を充足した。愛されないと嘆き、愛を求め、愛を得られないまま就職していった彼に、仕事は一つの大きな愛を与えた。彼の心の最も繊細な部分、最も秘められた部分は大いに喜び、彼は昔より一層人間らしくなったのではないだろうか。彼は今、愛される喜びに浸っている誰よりも人間らしい男だ。


自由詩 使命 Copyright 葉leaf 2014-09-27 11:36:24
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