晩秋_冬支度
藤原絵理子


風が止んだ 窓に凭れている月光
まるくなった猫の瞳に 映る洋燈の揺らめき
一枚の油絵から 零れ落ちる泉のしずくが
なめらかに滑り落ちた 鍵盤の上


都会のざわめきは遠く 静けさに
かき消された いくつもの気がかりと一緒に
迷い込んで さまよった 不安の
暗い森で ようやく見つけた 明かりのように


苦しみと情熱の記憶は 朧になって
遠ざかる 車窓から眺める景色になる
いつかきっと 懐かしく楽しい 思い出話になる


暖炉の薪が ぱちっ と爆ぜた 世界は 
あたしの周りで まんまるい猫の目になる
小さなラグの上に完結する ほっこりと暖かく


自由詩 晩秋_冬支度 Copyright 藤原絵理子 2014-09-26 22:16:36
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