あかい花
そらの珊瑚

大切な約束をしたことを
いいかげんなわたしは
いつのまにか
忘れてしまった
むきだしのアセチレンランプの猥雑さざめく夜市
腹を見せて死んだ金魚は
臭う間も与えられずに すばやく棄てられる
アルミを貼った期間限定のすてきな水槽
けれどわずか一匹も取れなくて
いつだって
うすい紙がヤブレテシマウ
本当は自分自身が破ってしまったのだという
自覚もないまま
針なんてどうせ飲まされることなどないだろうって
小指とともに
暗闇に沈んだくずかごに棄てる

夏は逝き
秋が降り立つ
季節のバス停で
増幅していく景色に
ついみとれてしまう
カレイドスコープ
万華鏡
そう、あれは生まれたての血の色の花
あるいは複雑に入り組んだ迷路
まるで人の心のようじゃないか
花を咲かせるころには
その葉はすでに無くて
永遠に会えない仕組みなのに
経路を遡ったみなもとには
燃え立つような
命の
約束があったような気がしてならない




自由詩 あかい花 Copyright そらの珊瑚 2014-09-26 09:13:58縦
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