宇宙の青白い光
吉岡ペペロ

もうすでに決断したことを

髪をすいては決断するように

女はその長い髪をなんどもなんどもすいていた

宇宙の青白い光を見つめながら

宇宙の青白い光に見つめられながら

長まわしの映像が切り替わるたびどきっとした

この世界の情報量の多さに打ちのめされていた

皮肉や逞しさや残酷に打ちのめされていたのだ

車やバイク、町の音

吹く町の風に飛ばされそうだった

ぼくは工事現場に捨てられた吸い殻のようだ

少年のころ覚えた歌を口ずさむ

目が赤く腫れてくる

ひとすじの鼻水が流れる

ぼくのような能力のない人間は

生きているだけでトラウマが溜まってしまうようだ

愛するひとのそばでは

愛を与えるひとでありたい

車やバイク、町の音

壁だらけの人生なのに暮らしには壁がない

長まわしの映像が切り替わるたびどきっとした

愛するひとのそばではせめて

愛を与えるひとでありたい

野良犬のような夜が続いていた

だからせめて餌を与える側でいたかった

懐中電灯で照らされるような暮らしが続いていた

だからせめて見回る側でいたかった

雨、町の音

夜が更ける

夜が明ける

車やバイク、町の音

どこからか工事現場の断続音

町を見つめながら昼飯を食らう

宇宙の青白い光を見つめながら

宇宙の青白い光に見つめられながら

打ち捨てられながら










自由詩 宇宙の青白い光 Copyright 吉岡ペペロ 2014-09-25 16:35:08
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