蓮池
アラガイs


憎しみを忘れるな
献身的に仕えれば仕えるほど
鬼はわたしを罵り唾を吐きかけた
黙々と庭で草むしりをする人間どもは何故か笑顔で楽しそうだ
※尤も人間たちは舌を抜かれていた
不思議な光景に映る
人間たちの姿
わたしは一度人間になりたい、と思わず叫んでしまった
其処が地獄とも知らず
焦るように少しづつ遠ざかり
わたしは其処から逃げ出して行った。

気がつくと餓鬼たちはすぐにわたしを追ってきた
逃げても逃げても
姿を変えては追ってくる
ある晩の日に
とうとう山を越えてわたしが辿り着いた其処は邪気の棲家で
辺りは草だらけの湿地に蒼い山の影
そして弓のように大きく反り返る月
周囲の池には薄桃色の蓮の花が咲いている
水平と蒼く/切れた線に鏡を近づければ
紅く顔は腫れ上がり
倒れかけたわたしは思わず柳の小枝につかまった
疲れはて、しばらく蓮の花に魅力されていた
すると、尖ったわたしのあたまの先がみるみるうちに消えて
もう一度、よくよく眼を凝らせば
それはさざ波の
、朧気に延びる一筋の藁
わたしはひかりに誘われて池に沈む
膝を抱えて
・・・恍惚と阿に沈む
珠の泡が浮き上がる
頭が垂れたのだ
水中を伸びた蓮の茎が笑う(如何にも念仏を唱えるように)
見渡せば
金色の襖と霞は開き
底はまさに人間たちの棲み家だった 。










自由詩 蓮池 Copyright アラガイs 2014-09-24 18:46:50
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