洗濯物と秋の風
まーつん

 干しかけた洗濯物
 風の一吹きに掬い上げられ
 みんな地べたに、落ちちゃった

 シャツにトランクス、靴下にパジャマ
 着古した心から、思い出の沁みを洗い落として
 まっさらに漂白したっていうのに、
 これじゃ元の木阿弥だ

 見上げれば、
 日が高く天を焼き
 蒼い秋空の素肌が光る
 忙しない時の指先が
 季節の衣を剥いたから

 庭先に立つと
 裸足を噛む芝草の感触
 時計の振り子がくうを打つ音
 遊び飽きた蝶が羽を畳んで
 静けさを栞に挟み込む

 拾い上げた白いシャツ
 付いたばかりの汚れの下に
 隠されたのは古い染み
 落とし切れない薄紅色は
 実らぬ恋をもぎ取って
 齧った果肉から飛んだ汁

 災い転じて福となす、か
 古傷の痕を覆い隠した
 新たな汚れに苦笑い

 風の悪戯に感謝をこめて
 おどけた仕草で敬礼しても
 目覚めたばかりの秋空は
 まだ、笑い返さない

 まあ、
 気を取り直して
 新しい季節の始まりだ

 







自由詩 洗濯物と秋の風 Copyright まーつん 2014-09-23 18:55:27
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