美術講師
Giton
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ぼくをここに最初につれてきたひとは絵かきだった
ラブホの裏 どぶ沿いの小径をとにかく奥へすすむ
落ち葉とぬかるみで滑り落ちながら昇ると尾根道になる
しばらくしてふるい木のベンチと道標がある
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ここへ来るといつも秋に来た気がする
風のなかに油絵具の匂いを運んで来る
青白いそら はなだいろの雲
木々は深く繁っていても夕刻になる
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きょうもイーゼルを立てている人がいる
キジの剥製がひそむくらがり 硝子の眼玉
短パンの青年が通り過ぎる
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人がいなくなるとぼくはカンバスの前に立ち
絵かきは指でプロポーションを測っていた
十七歳の真白い細い腕がはずかしかった
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