決定権のない恋。
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それは、いつも冬でした。

バレンタインの空気はピンク色で、
寒さのピークを緩和しながら、激しさを増す。
イロトリドリのラッピング材料の中、
アタシは埋没してゆく、耐えきれない愛の渦に。

何年か前の冬、インターネットでとある男性の詩を読みました。
それはとても激しい恋のかおりのする詩でした。
引き返せない覚悟と、流れてゆく物事の緊張感。
なのに、とても自然に吐き出されていて、
言葉が、心に引っかかって、違和感を感じたんです。

その詩を読んでから、すぐにその人を好きになりました。
初めて男性が恋をしている姿を美しいと思い、儚いのだと知りました。

それから、アタシはバレンタインという行事に少しだけ挑戦してみたくなって、
生まれて初めて、カップケーキを作りました。
もちろんチョコレート味でした。
散々悩んだのに、とてもシンプルなラッピング材料しか選べなかった自分のことも、
とても可愛い奴だ。と、思えました。

そうして、行事が一段落してから、
アタシはインターネットで読んだ詩の主に一通のメルを書いたのです。
詩を読んでからの色鮮やかに変化した視界を、
どうしても伝えたかったから。

数日後、そのメルの内容が、一遍の詩になってかえってきた時の、あのキモチ。
今でも思い出せる。
ずっと、その感情に適当な名前は見当たらなくて。
でも、今思うと、あれは激しい欲情だったような気がします。

幼すぎて、理解出来なかった。
ただ、怖かった。
男の人の恋はとても激しいこともあるのだと知ったあの日から。
怖くて、怖くて。
その激しさをもちあわせていない彼氏になった子のコトも。
その想いを望んでしまっている自分も。
怖かった。

それから、毎年冬になると、恋をしています。
とても、激しい恋をしている人に。


未詩・独白 決定権のない恋。 Copyright e R i 2005-01-28 20:55:19
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