体と心。
nemaru

こ、こいつ
どこにそんな力が…!?

(愛だよ、これが愛のちから…) ぐぐぐ

う、そ、だ、よっ!

めきょ

取っ組み合いになると
すぐに顔を下げるので
チャランポーをくらうのだ

(笑い声)

ひん曲がった鼻は
もう
もどらない…

ぐすっ

が曲がってる…

ぐりりっ!

「は〜い、治ったよ。」

接骨院のおじさんの容赦なさに
思い知る

体というのは
パーツだ

着想を得た

僕の心は
体と切り離されて
トンネルに
入っていった

まったねー!

軽く手を振る体とは裏腹に
心は
トロッコのふちをがっちり掴んで
緊張した面持ちで
暗闇の中に
消えて
いった…

あれから十五年

(なんか、冷たいよね)

あー、それは…

体は
てっきり
心と
併走しているものだとばかり
思っていたが
心はまだ出てこない

トンネルの出口を知らない体は
Uターン
入り口から
探さなきゃなんない トホホ…

おーい
こころやーい

俺は別に感じんけどな

(感じないのが問題ナンデス)

なか卯で吉田さんと
牛すき丼を食べながら
心を探す

吉田さんの上唇には跡が残っている
「あいつら。」
に立ち向かって
帰り道にカッターで切られたとか。。

笑っている
今は。

(笑い声)

同い年なのに老けていて…

パーツじゃない体は
ふけるのも早いらしい…

奥さんも
子どももいて
うらやましいな…

愛だよ、愛。

歳相応に見られない体が
トンネルに
取り残された
心に追いつくとき!

元・心だった
荒れ狂うモンスターに引き裂かれ
飲み込まれるが

その核心で
ずぶ濡れの猫ちゃん状のものを抱きしめた瞬間に
トンネル内は
ガラス状に砕け散って
真っ白な世界が訪れる ファー…

体と心は抱き合って…

(ごめんね!)

現実にはない
和解。

元気だしな。

短い旅の終わりは、今日も
吉田さんの
おごり。

(あざっす)

(…)

僕は崩落現場で手を合わせる。


自由詩 体と心。 Copyright nemaru 2014-09-21 23:29:56
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