九月のアブラセミ
イナエ
空に中秋の満月が上るとき
ぼくは見付けた
彼岸花が長い首を空に伸ばした根元に
仰向けに転がっているアブラゼミ
つい先ほどまで生きていたような
みずみずしさ
ひぐらしの声を聞いたのは半月も前
草むらでは秋の虫が伴侶を求めて騒いでいる
アブラゼミの仲間が地上から去って
すでに一か月
今年の最期をつとめるにしても
遅すぎはしないか
それとも
セミにも生涯独身の生き方があるのかな
自由詩
九月のアブラセミ
Copyright
イナエ
2014-09-21 13:36:10
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