家出
ふるる

遠慮がちにドアを叩く音

家が帰ってきた。

喧嘩して家出していた家が。

家との喧嘩は大変だった

棚のものが全部落ちたりして。

どうでもいいことで喧嘩になった。

あんなことすぐに許してやればよかったのに。

何だかお互い意固地だった。

みんなにも迷惑かけた

「家がそっちに行ってない?」なんて聞きまわって。

家がしょぼんとしている様は雨の中にいるみたい。

ごめんねと言って風鈴をつるした。

近所迷惑だからなんて意地悪だった。

ちょっとだけいいかな?と言って差し出してきたのに。

僕以外のものに、家がどきどきするのが嫌だったんだ。



その日、家はいつもより湿っぽくてあたたかかった。


                       ちりん。


自由詩 家出 Copyright ふるる 2014-09-20 22:12:43
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