夜毎 夜迷
木立 悟





雪に重なる雪の音
角を曲がり 消えてゆく
光のはざま 分かれ径
樹々のかたちに倒れる霧


光の壁に光が
影の壁に影が浮かび
輪郭だけが吼えている
誰もいない街に吼えている


夜の車の
助手席に生える草
やがて音になり
土にこぼれ 消えてゆく


自らを刺し
片目になった夜が歩く
雨が 灯が
あとをついてゆく


背く鏡を海に捨て
従う鏡を叩き割り
そのままを知るものは消え去った
万華鏡を残し 消え去った


途切れ途切れに空へつづく髪
音の描く絵は降りそそぎ
地に触れては燃え上がり
灯のない径をまだらに照らす


無色の夜を頭に被り
海辺の街はじっとしている
雪に捩れた橋の上を
脚のない平和が通りすぎる


息を吸えば螺子
息を吐けば発条
雨は雨の横顔を
常に向き合うように空へ放つ


傘の群れが地下道に吸い込まれ
何処かへ何処かへ消えてゆく
波が波に触れるように
雪はふたたび雪に降りる






























自由詩 夜毎 夜迷 Copyright 木立 悟 2014-09-20 09:13:15
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