せっくすでは
楽歌
せっくすでは、わかりあえないなにかをさがして
ぼくはおなにーする
きみをおもって、おなにーする
夕べ、なんで君が怒ったのかはわからないままだったし
部屋には脱ぎすてられた寝間着と
ふわふわしたぬいぐるみが、
あさっての方向に目を逸らしているんだよ
カーテンの裏っ側に、
いくつもの言い訳を隠しておいたつもりだったのに
うさぎ、うさぎがさ、跳ねたんだ
それは、たぶん月がきれいだなぁなんて
僕が開け放ったせいだと思うんだ
ともかく、そこにはなかった
あるはずのことばたちが、消え失せてしまっていて
ぼくはさっきから、リターンのない呼び掛けを
あのさ、あのさ、って
繰り返しては、天井に恨みがましい視線を投げつけるばかり
どうしたらいいのさって、思ったよ
そしたら、まさに、その瞬間に
どうしたらいいのよって、声が聴こえて
あぁ、あぁ、あまりのうれしさに
ぼくは笑ってしまうのです
ほんとうに、救いようがないなぁ
ふてくされて、布団を頭まで被って
ねぇ、ほら、月明かりがきれいだね
って、言えずに、
おやすみを、カーテンの裏っ側に、そっと
せっくすでは、わかりあえないなにかをさがして
ぼくは、おなにーする
ばかって、ばかっていってよ
布団の向こう、数センチ先の君のくちびる
ぼくはよろこびとむなしさをしゃせいする
ぼくは、よろこびと、むなしさを、
しゃせい、する