寒椿
あおい満月

住宅街の軒に
寒椿の気配がする
終わりを告げる百日紅
色を変える準備を
始める銀杏
キョウチクトウは空高く
去っていく夏に手を伸ばす
あらゆるものを
手放すようにと教えられた
魔女の囁きは
呑み込まれる気泡の苦さにゆれて
それでもあの左手と結ばれたい
拳を振り上げる

またひとつ、
何かが壊れれば
何かがひとつ、
やって来る。
衰弱した心は、
時計よりもはやく
明日の足跡を知っている。

寒椿の咲き乱れる頃、
わたしはふたりに、 なる。


自由詩 寒椿 Copyright あおい満月 2014-09-13 13:14:51
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