おじさんのうみ
nemaru
ビニール製の手帳ケースから
トリキュラー
取り出して飲む
生理を整える
きのう
先っちょから膿の出たおじさんと
三回した
精液も膿も一緒だと
笑ったおじさんに
遠慮なく
された
電信柱の貼り紙に電話して
バイアグラゲットした勇気あるおじさんと
さみしい病気もらった勇気ある私
そして
ゴムをかぶる男根のおまえ
自称
野山を駆け巡った男根のおじさん
富山県出身
冬の北陸地方
絶壁にたたずむ男根は
波しぶきを浴びながら
くしゃみして
きのう
わたしの中で
暖をとった
バイアグラで死の淵わたるど根性の男根
私のおなかで擦って
血管切れて
死んでもいいと言った男根
ほろよい飲んで
心臓バクバクして怖いと言った男根のおまえ
歳が近いだけで
タバコ吸わないくせに一回でバテる男根のおまえ
私が好きな
おまえがもってない
さみしい病気をもってない男根のおまえ
くしゃみをしない男根
金もない男根
稼いだ金で飼っている男根のおまえ
飼われる男根のおまえ
ぬくぬく男根のおまえ
せめて
この男根のおまえが
野山を駆け巡ってくれてれば
北陸で産声をあげてれば
悔しい
死んでもいいから
セックスしたい
とは
死んでも思わない男根のおまえ
思ってほしい私
五十がらみのおじさんに
金も体もましてや根性すら負けて
これからどうすんの
私たち
言えばいなくなる男根
筆をとり
置き手紙ひとつ残し
去っていくトレンチコートのナイーブな男根
埠頭で吸えないタバコを吸う男根
いなくなるとさみしい病気の私
私は死ぬまでピルを飲み
お前は死ぬまでゴムをかぶり
私たちは交わらない
私たちがたどりつくこともできない場所で
おじさんの
膿だけが
生きようと
もがいていた