幻影
陽向

喜びはほんの数秒で消え去っていくのに
悩みは何時間でも付き纏う
ビルの屋上から飛び降りてしまおうかしら?
女の背後にその女の声が聞こえる
自分の声なんて いつも自分から聞こえてくる気がしないの

比べるのは数の論理 歩き疲れたくないから
増える邪念に押し潰されるだけ押し潰されて
破片が食い込んだ部分から悲鳴を上げるのね
誰もが言うよ 自分にも身に憶えがあるって

誰か助けてよ
全く 何なの!
ビルの屋上に私を届けたいのかしら?

世界なんて言うけれど それはあなたでしょう?
失敗を責めたてるけれど 失敗よりあなたに原因があるんだ
責める方向にはいつも鈍い痛みが迸っていて
滝のように 黒く染まるの それが目的なんでしょう?
あなたにはそれは分かっているの? 聞いてるけど聞いてないでしょ

世の中よりもあなたの存在に私は震えあがる思いなの
私の世の中にはあなたがいて 包み込む世界にあなたが入っていて
内側から揺さぶられると 動いているように思われるの
誰も動いていないのに

落ちるのは私ではない 私の幻影だけ
今まで数えられない程 幻影は落ちていったわ
一つ残っているのは ここにいる私だけよ



自由詩 幻影 Copyright 陽向 2014-09-12 18:15:21
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