逃げる
Lucy

逃げている
追いかけてくるものから
ひたすらに逃げる夢

スローモーションで
お決まりのように
足が重くて
だるくて
走れないのに
すぐそこにまで
迫りくるものから
逃げている

いつもの緩い坂道が
目の前で急こう配に立ち上がる
数段の梯子の間隔が
信じられないくらい拡がる

それでも必死で
手を伸ばし
足を運ぶ
のろのろとしか
動けない
全力を振り絞っても
間に合わない
間に合いたい
追いつかれたくない

ふすまを開けると
広い畳の部屋の奥にも
またふすま
そのむこうにも
ふすま
それを開けて
もっと奥へと逃げのびる
隠れても隠れても
追いついてくるものから
今日も
逃げる夢を見る

疲れ果てて
目覚めたあと
不思議に思い返すのは
自分が諦めていなかったということ

生きる事に
諦めもリタイアも許されないから
逃げ続けるのだろうか
それはもう意志でも
欲求でもなく
ただ恐怖のようなものにかられて

不意に全身を激しく叩かれ
足がもげ首が曲がり
それでも跳ねて逃げようとしていた
いつかのカマドウマ



自由詩 逃げる Copyright Lucy 2014-09-11 19:11:22
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