逃げる
Lucy
逃げている
追いかけてくるものから
ひたすらに逃げる夢
スローモーションで
お決まりのように
足が重くて
だるくて
走れないのに
すぐそこにまで
迫りくるものから
逃げている
いつもの緩い坂道が
目の前で急こう配に立ち上がる
数段の梯子の間隔が
信じられないくらい拡がる
それでも必死で
手を伸ばし
足を運ぶ
のろのろとしか
動けない
全力を振り絞っても
間に合わない
間に合いたい
追いつかれたくない
ふすまを開けると
広い畳の部屋の奥にも
またふすま
そのむこうにも
ふすま
それを開けて
もっと奥へと逃げのびる
隠れても隠れても
追いついてくるものから
今日も
逃げる夢を見る
疲れ果てて
目覚めたあと
不思議に思い返すのは
自分が諦めていなかったということ
生きる事に
諦めもリタイアも許されないから
逃げ続けるのだろうか
それはもう意志でも
欲求でもなく
ただ恐怖のようなものにかられて
不意に全身を激しく叩かれ
足がもげ首が曲がり
それでも跳ねて逃げようとしていた
いつかのカマドウマ