個人音楽
塩崎みあき
音楽の動機はすべて
レクイエムなので
今夜曇った夜空の下に
キミと同じリズムを感じて
死んでゆく人が
いるのだとしたら
どんな風に
泣いたらいいだろうか
情報をこんなにも
共有している世界なのに
死が
共有できないのでそればかり悲しい
雨の去った後の
夜道の湿度を感じ
消えた音楽に
今更ふれている
キミの愚鈍
暗い中から
ふと浮かび上がる
コンビニの軒に
少しまだ
滲んでいる
耳を塞げば
傘の中に
ウエーブのかかった空気に
心臓のリズムを感じ
誰かの追悼番組が
雨音から生まれた時のまま
流れた
白くて四角い
病院の一室が
キミのいる場所
そこで
沢山の音楽は流れ
硬くしぼった雑巾のベッドで
みんな安心して
眠ってしまう
間違っているかな
柔らかな寝具に包まれて
眠りにつく事だけが
安息とは限らないだろ