今は説明できない世界で 存在しているけど知らない世界について
そよ風
今は説明できない世界で
存在しているけど知らない世界で
私たちはいつも同時に春が
きた事に気付き、夏が終わる日
に一粒涙を流す
今は説明できない世界で
存在しているけど知らない世界で
同じタイミングで月を見上げ
同じ日の事を思い出す
現実より鮮明に
色づく世界
私たちが二人でひとつだった日を
知る人は誰もいない
現実より鮮明に
色づく世界で
呼吸をしてはいけない
そのリズムに同調してはいけない
本当の事を言えば
その世界では
呼吸はできない
だから
今手にしている
マグカップを頼りに
現実の世界に戻るしかない
マグカップの白、テーブルの木の肌触り、
壁にかかった幾何学模様の絵、1.2.3.
ゆっくりと目を開けて
ひとつひとつ現実を手繰り寄せ
もどって来ればいい
今は説明できない世界で
存在しているけど知らない世界は
甘い液体をジワジワとだす
それを口にしたら
君はもう戻れないだろう
今は説明できない世界で
存在しているけど知らない世界の
事は忘れたほうがいい
ページを閉じるタイミングは
とても肝心だ
色褪せた世界で
生き急ぐ必要はない
日々、千円札の数と
100円玉の数を数えていれば
一日はあっという間に
終わるし
正確な数字を伝えれば
「もっともだ」と人は言う
根本的にもっともじゃなくてもだ
もう二度と巡り合う事のない君へ
もしも、今は説明できない世界で
存在しているけど知らない世界の
住民になったとして
鮮明に色づく世界を手にいれても
やがて
色褪せる
世界は輪になり
まわっている
呼吸をしてるこの世界で
目を開けて
走るしかない