はくじょうのひと
中村 くらげ

「ゴミ箱が目印なんです、見えないんだけどね。」

肩を貸してホームの隙間を越える

電車は揺れ始め吊り革と白杖に塞がれる両手

私とその人は目を見て話をした

「どこ見て歩いとんねん!って怒鳴られたりしますよ。」

がははと笑って冗談を飛ばしているから

杞憂も飛ばされて笑顔になってしまう

「新しい人生を楽しんでいるところです。」

常に緊張状態が続く闇の中でも

その人には光が見えるのだろう

目を閉じて耳を澄ましてみる

車内は喋り声と車輪の音

がたんごとん

がたんごとん

『次は明石、明石です。』

「また何処かで会えばよろしくお願いします。」

「それでは、お気をつけて。」

駅のホームがだんだん遠くなっていく

車窓を流れる夜の街はやけに明るかった


自由詩 はくじょうのひと Copyright 中村 くらげ 2014-09-09 21:37:50
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