認めない
イナエ

ぼーとテレビを見ていて
半開きの唇から
涎が一筋
急いで手で拭き…
認めない
涎を垂らしたことが老いのせいだなど
ただ 口を閉じていなかっただけ
幼児は涎を流し
若者だって 口角泡を飛ばす
ことだってあるではないか

道を歩いていた
ちいさな段差につまずいたとて
足が上がらなくなったなど
認めない
歩幅と段差のタイミングが
合わなかっただけ
子どもだって
よくつまずくではないか

棚の上の鍋を取ろうとして
下腹部に力が入り
膀胱に溜まっっていた尿が
漏れ出た感覚に
慌ててパンツを確かめても
認めない
たとえパンツが湿っていても
今は夏
滴った汗に湿っただけではないか
子や孫に政治を語り
人生を説くわたしが
尿漏れだなんて…

認めるものか


自由詩 認めない Copyright イナエ 2014-09-09 18:42:35
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