夜風に揺れる柳は指揮棒
無数の電灯や家の灯りを観客に
雲の幕に覆われた月が
月光という合奏と共に現れる夜
デクレッシェンドして
新月になり
クレッシェンドの頂点で
今宵は満月を迎えた
満ちて欠けて
その二拍子を中心に
春は夜桜、花吹雪
月を背景に舞い散る華よ
夏の星空、天の川
一年に一度の愛の詩
秋の重奏、虫の声
足許の静かなる旋律よ
冬は雪片、月下白
光の結晶が降り積もる
満ち欠けの周期が季節と重なり
二度と無い小節を紡ぐ
今夜は名月
揺れる薄の遥か上で
月は満ち欠けと月光で
夜を奏でる