夜の海
猫の耳

夜半にうっすら目をあける
カーテンの隙間から
仄かに月明かりが差し込む
部屋の中は蒼い海の世界
私は、
月影が揺らぐ波間を静かにたゆとう

どこへ流れていくのかも
どこへたどり着くのかも
わからない
手足の感覚も
寒さの感覚もなく
ただ、ゆらゆらと流されるままに

頭上に輝く満月だけが、
私の行く末を知っているかのように
哀しい光を届けてくれる

寂しいとか悲しいとか
あまりにも考えすぎて
とうに私を通り過ぎていった
今はただ、
自分の無力さを穏やかに受け入れる

意識が徐々に遠のいていく


やがて朝が来る
何事もなかったかのように
雑然とした部屋の隅のベッドの中に
私はその身を投げ出している

蒼い世界はもう
夜の海に流されて遠くへいってしまった
私の心を置き去りにして…


自由詩 夜の海 Copyright 猫の耳 2014-09-06 23:08:51
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