椿象(かめむし)の朝
michi

払暁(ふつぎょう)の鐘が鳴る
波紋のように広がって
目覚めよと言う
秋虫の声に蝉の声
空を劈(つんざ)く鷺(さぎ)の一声
ゴミを集めた汚車(おしゃ)の呻き

朝やけが町を埋める
遠く東雲(しののめ)の空から
目覚めよと言う
橙に染まる涼しい川
夜露に濡れた川べりの草
すっくと伸びた骨に似た橋

クレッシェンドする世界の胎動
その音量を下げながら
迷い込んだ椿象を
網戸を開けて
逃がす



自由詩 椿象(かめむし)の朝 Copyright michi 2014-09-06 07:16:15
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