住う寝る所 二編
るるりら

【また きます】


「雨が降り始めましたから
みなさん もう いそいで 降りてください」
と云われて 震えた
そういわれて わたしは いそいで 
その場を離れてしまった

ほんとうに怖いのは 土砂が我が家に襲い掛かり
一ミリも生きられないと言っておられる方だったろうに
わたしなんかより 恐ろしく感じておられるだろうに
わたしは 一目散に 逃げた

また
きます
と、いいたかったが
いわなかった

あなたも
そこに
いなくて
良いですよとは
言って差し上げられない
ではどこが その方の居場所なのだろう

なぜ
あなたは あんなに明るく
あなたの住まいを 復活させようと
しておられ 
「がんばってるよ」って言葉の響きも
なぜ
あんなに凛としておられたのか

また きます。 と、 
心で 念じることしか
できなくて

心の中で 思う
私自身の住まいによく似た
この被災地に
また きます


【疑問】

ここにいても いいんだよ
ここから初めて いいんだよ
あなたの 居る その場所で
あなたのほんとうの力を 
ふるい起こせば いいんだよ

土砂の中から突き出ていたという腕の話を
怖いと感じて いいんだよ
なにか嫌な匂いは もしかしたら糞尿のにおいかもしれない
けれど 死体の匂いかしら なんて 
怖いと思っても いいんだよ

土砂を土嚢につめて 腕から腕にバケツリレー
死ぬほど 重いと つぶやいてしまって
みなで青ざめる
死んだ人がいる場所で つい 
死ぬほど重いと つぶやいてしまっても いいんだよ

なぐさめられる言葉もない場所に立って
詩を 書いても いいんだよ


自由詩 住う寝る所 二編 Copyright るるりら 2014-09-04 11:07:10
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