百鬼繚乱 < 2 >
nonya
HONEONNA (骨女)
わたしの肩甲骨を
あなたの冷たい指先が
抱き寄せると
わたしの胸骨は
哀しく軋んで
あなたの裏切りを覚った
わたしの鎖骨を
あなたの嘘がゆっくりと
伝い落ちて
あなたの名を呼びながら
わたしの末節骨は
宙をつかむ
けれど
ベッドの下にそっと落とした
わたしの涙骨
気づくのはいったい
誰なのかしら
*
NURIKABE (塗壁)
君は壁を作る 今日も明日も壁を作る
そして壁は迷路を作る その中を君は
さまよい続ける 君は壁を作る 透明
の壁を作る 透明の壁が連なった透明
の迷路からは 人は見えるけど温もり
は受け取れない 街は見えるけど行先
は皆目分からない 君はいつも疲れて
いるのに 壁を作るのを止められない
僕は壁になる 用もないのに
壁になる 時々君は僕にもたれかかっ
て 流れる雲をぼんやりと眺める 僕
はただ見守ることしか出来ない ひと
休みしたら 君はまた壁を作りに行く
のだろう 迷路をもっと複雑にしてし
まうのだろう でも君は
何処に出口があるのか知っている 出
られないのは自分の弱さであることも
もしも夕焼けに涙ぐむようになった
ら 僕はいつでも君の重さを支えてあ
げる 袋小路のどんづまりの壁として
*
NOPPERABOU (のっぺらぼう)
モノとコトが溢れすぎていて
嫌になる
何処を歩いても躓いたり振り回されたり
限られた時間しか与えられていないのに
どうして
こうも難しく生きようとするんだろう
人って
もしも明日目覚めた時にモノとコトが
キレイさっぱり
初期化したみたいに消えていたら
みんな怖じ気づいて固まってしまうんだろう
せっかく
本当の自由を手にいれるチャンスなのにね
わたしならまっさらな今日の片隅に
雲に似せた眉を描いて
空の色の瞳を描いて
丘の高さの鼻を描いて
心地好くせせらぐ口を描いて
小鳥を描いたら耳のようにぶら下げて
新しいわたしを始めるだろう
どうせモノとコトを並べ替えるだけの
コピペしたような毎日が続くんだから
たまには
そんなことが起こってもいいと思うんだけど
*
NURARIHYON (ぬらりひょん)
つかみどころなんて
あったってしょうがない
そんなにやすやすと
つかまってやるものか
若い頃の苦労は
買わずに質に入れたし
長い物には
巻かれるふりして帯にした
どんなに虫が好かなくても
真っ正面から当たるなんて
青臭いドジは踏まない
風を知り尽くした柳のように
へらへらと言葉をかわしながら
いつまでもつき合ってやるぜ
今宵も
ぬらりんと
夜の街に這い出したら
宴の
ひょんな末席から
おやじギャグでも散布してみるか