地下鉄のホーム
凍月



寝過ごして起きた車内
まだ回転数の低い頭が
知らない駅名を朧気に聴いて
薄暗いホームに飛び降りた

誰もいない地下鉄のホーム
走り去った電車は
暗い暗いトンネルに吸い込まれて消えた
伽藍堂のホームに一人だけ
電光掲示板も時刻表も
駅名すらも見当たらないホーム
電灯の呻きだけが聞こえる静寂

錆びたベンチに座る一人
線路と線路を区切る
連続したコンクリートの柱
反対側にも誰もいない空虚

人の気配を感じて右を振り向く
人影が見えた
いつの間にそこにいたのか
左にももう一人
しかし彼らは幽霊のように
人形のように
実体の無いような雰囲気で

暗い地下鉄のホーム
僕と何人か
電車が前触れもなく現れ
乗ろうとした僕を
彼らは止める
「お前にはまだ早い」
瞬きの後
消えた電車
吹き抜ける、冷たい冷たい地下の風

いつもの駅に戻るため
反対側への階段を上る
改札も何もなく
ホームに着いて向かいを見ると
そこには誰もいない


目が覚めて
そこはいつもの駅で
いつものホーム
流れる人、立ち止まる僕
地下鉄?
あれは何処の地下鉄だろうか?

彼らは一体、誰だったのか






自由詩 地下鉄のホーム Copyright 凍月 2014-09-02 23:55:07
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