カスピ海ヨーグルト
ことこ
ブローニーフィルムみたいに大切に試してみては破くコンドーム
ことごとく逆らいきれずに動物の骨だったという楽器にさわる
叫ぼうとしても脊髄反射だしなにかを失うわけではないよ
離島から明日帰りますという手紙 よごれた体をすりよせる猫
石鹸ですべてきれいな夏だった フィギュアスケートを流し撮りしてた
月極の駐車場から溢れだすうすまることのない海をみる
蝙蝠(こうもり)の心音でした セーターのほころびみたいにせいかくな咳
目薬を人肌くらいにあたためて気球に隠れたわたしを飛ばす
花束をよやくするため並んでる券売機から出ている煙
(戸棚から二酸化ケイ素の声域で)息継ぐ間もなく即答してた
なんかもう森林のおくでふたりだけ水分だけで生きていきたい
踏み台にしたパンジーの標本をやさしくいたわる浴室のなか
おさえこむことでつぶれた苺からカスピ海ヨーグルトができてく
ふたりとも恐れていても新聞の届いたおとで朝になってる