写真嫌い
イナエ
ぼくの産まれた家の梁に掲げられた肖像写真
セピア色の男は祖父だという
のっぺりとした老女は曾祖母だと聞いた
ぼくの子どものときから宙を睨んだ顔
五十年以上も表情を変えることなく
梁に張り付いている
タンスの上置きから出てきた少年の写真
幼いぼくが虫取り網を立てている
ぼくが今
怒っていても 泣いていても
薄笑いのままの顔
それは過去の抜け殻
人は絶えず揺れ動いていて
一瞬たりとも同じところに留まらない
写真などに固定されてたまるか
2014/09/01
自由詩
写真嫌い
Copyright
イナエ
2014-09-01 09:38:31
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