体温
あおい満月


胸に手をあてる。
指がゆっくりと心臓に近づく。
きいたことのない、
初老の声が響く

(自身の内へ
精神の内へ入りなさい
そこに、
求めているものが
必ずあります。)

海を映す空の鏡になって
ノートの上に涙を落とす。
涙は骨になって
息を求める。
そこに血肉を与える
動物はとても小さいけれど
見えない目のかわりに牙がある。
動物は右手に上ってきて
手のひらを噛む。 血があふれる。
血は、涙の彩になり
ことばに風をふきかける

窓が割れて、
動物に翼が生えて
外へ飛び出していく
空を舞った灰の羽根が
髪の毛に絡みついて
はじめて、
孤独の体温を知る。



自由詩 体温 Copyright あおい満月 2014-08-31 14:44:44
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