刹那
ウデラコウ

夏の終わる瞬間に
暗闇の水平線を横切るように
僕は ただ 只管に

君がさっき見せた
横顔が 
見たことないほどきれいだったのは

宵闇のせいか
暑さのせいか
提灯のせいか

言い訳を片っ端からあげても

ずっと ずっと 無視をしてきた

君への想いは

堰を切ったように 溢れ出す


それを 見ないように 気付かないように

珍しく 結い上げた髪の毛の
遅れ毛と 項の コントラストが
僕を 内側から 激しくかき乱すけど

それさえも 無理矢理に 潮風で拭い去りたくて

今までの すべてが
壊れるくらいなら

全部この 暗い夜が もってかえってしまって構わないから

どうか 君だけは 変わらず 笑っていて欲しいと

誰もいない 横須賀線のホームで

薄い 蛍光灯の下

君が好きだと 叫んだら

もうとっくに
暖かいところへ 帰っているはずの君が

ふいに僕の目の前に現れて
微笑んで くれやしないかと

なんとも都合の良いことを 真剣に祈ったりして

酷く 酷く 僕の心は
不安定のまま
刹那に見せる 君の色々な表情が
僕をさらに 不安定にさせる

無防備なその左手が
僕の横を行ったり きたりするのを
ただ 眺めているだけで良かったのに

今じゃもう どうにかして
それを僕のものにしたいと
必死でその方法を考えていて

宵闇に見せた 君の笑顔が
月明かりをも 霞ませるくらいに
あまりにも 眩しくて

僕は ぼくは

もう 本当に


刹那に生きる ぼくたちに
刹那に抱く この感情を
許してもらえるのならば

どうか

刹那の間で 構わないから
君のその 恒久に色褪せない
何よりも眩しい 微笑みで

どうか

僕を 射抜ききって



自由詩 刹那 Copyright ウデラコウ 2014-08-31 01:09:14
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