蝉時雨
千波 一也
もう二度と
会うことのないであろうひとを
思い出させるように、蝉時雨
誰、と決めず指定せず
つぎつぎと浮かんでは消えてゆく
顔と名前と時と場所
じっくりと、はっきりと
立ち止まることを否めるように
やんでは続く、蝉時雨
生命に勤しむ
精いっぱいの直向きさは
形を整えきれない言葉なのだと
教えを浴びる夏のひと日
どこへも残れない
あつい呼吸が風を濡らしていた
自由詩
蝉時雨
Copyright
千波 一也
2014-08-30 22:27:41
縦