飛行模型
クローバー
ばねをまいたら羽ばたくブリキの飛行模型
月の船に帆をかけて
静かな表を滑っていく
月の裏側には人差し指を立てたウサギ
聞き耳を立てる
パイロットは
ブラックボックスが正常か、と
今120回目の点検を終えたところ
私の言葉はそんなところには残らないのに
とキャビンアテンダントが
パイロットの頬に視線を送る
宇宙を無言が飛び交う
波形のレーダーに映る
感情ほどのささやかさで翼の後ろに揚力が働く
どこかへ届けと放たれた
受け取る卵の殻のふち
バタフライの飛行機がパラボラのふちを泳ぐ
夜は羽音を立てて
知らん顔して浮かび上がる
夜はまた、私を置き去り
朝が来ちゃうよ。