たそがれフリスビー
Seia

たそがれを
使って
フリスビーをしよう
向こう岸までとばせたら
わたしのかち
ってことにして

たそがれを
まるめて
叩いてのばして
ハサミを駆使して切ってたら
なんだか
さみしくなってきて

東京で降る雪は寒いですか、こちらは雨です。雪は降ってないですか、そうですよね、夏ですもんね、高架線、なんて無いけど、高架線の下に居るような気持ちです。川は増水して、足首まで浸かっているのですが、ぬるくてどうしようもないです、動けないのです。手に持っている高枝切りバサミは、地面に突き立てました、朝顔が、ツルを伸ばして掴んでくれたら、って思うだけで少し笑えそうです、そうです、今は笑顔ではないので、はい、そうだ、東京では何が降っているのですか。こちらは晴れです。


バス・ストップ
ゆれるのはいなほ
かげは
のびきって
わたしから
はなれようとする

おいて
おいてか
ない(で)


最近、ピザの夢を見るんです。そう、あのピザ、イタリア料理の。くるくる、くるくるまわっては、具の方をこちらに向けて迫ってくるんです。チーズが、あつあつのモッツァレラチーズが顔に、鼻に、くっつきそうになるその時、目が覚めるんです。夢占いをしてもらいたいわけじゃないんですけど、マルゲリータ。ねえマルゲリータ。バジリコの緑が焼き付いて、離れないんです。今度あの夢を見たら、手に持っている、持って、いる、ああ、わたしなにも持っていなかった。おいてきてしまった。


女の子が
とおりすぎる
わたしのうしろを
たつたつと

ふりかえっても
わたしのことなどみえないようで
ちいさくなっていく
髪を、肩を、濡らしながら

まばらになった
雲の隙間から
砂利の味がする

耳の奥にこびりついているのは
クリスピーな生地が壊れる音でした

ざく
ざくざく


たそがれは
思っていたよりうすく
はじっこの方を
さわると
指が
簡単に切れそうで

こわいくらいに
さみしさも
てごたえのなさも
こどくも
おそろしさも
ぜんぶ
ぜんぶのせて
とんでいってしまえ

フリスビーの行方は
誰も知らない

投げたそばから
とぷんと暮れた空に
まぎれてしまったから


自由詩 たそがれフリスビー Copyright Seia 2014-08-29 15:43:15
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