黒子の島
あおい満月

地球上に一つしかない
と言われる石を持っている
それをわたしは
手のひらの可愛い琥珀に贈りたくて
釦を押す。
すうすう、
琥珀は寝息をたてて
目を見開きながら寝ている。

夢のなかで琥珀は、
やさしい黒水晶の海を
漂っているに違いない
ふと、わたしは、
うさぎのことを思い出した。
うさぎも黒い水晶だ。
孤独を好む生き物だと、
少年のままの
左手が教えてくれた

地球上に、
たった一つしかない石が
くるくるまわりだす
西から東へ
東から西へ
そこに月をあてがえば
黒子の島が浮かんでくる
黒子の島は大きくなってわたしを呑み込む



洞窟だった。
目覚めた場所は
可愛かった琥珀が
ヒトガタになり
血にぬれた釘を持っている。
琥珀には目がなかった。
割れた琥珀のひとかけらから
蝶々が目をさまして
真っ赤な羽根を
血を滴らせながら飛んでいる
目のない琥珀は
笑いながらいう。
(あたし、生きているんよ。
生きているんよ。)

琥珀を舐めると
わたしからも目がなくなる。
わたしも笑いだす。
東の空が血に染まり
太陽が叫びをあげる
地球上に一つしかない石は太陽の心臓になる


自由詩 黒子の島 Copyright あおい満月 2014-08-25 22:21:03
notebook Home