黒子の島
あおい満月
地球上に一つしかない
と言われる石を持っている
それをわたしは
手のひらの可愛い琥珀に贈りたくて
釦を押す。
すうすう、
琥珀は寝息をたてて
目を見開きながら寝ている。
夢のなかで琥珀は、
やさしい黒水晶の海を
漂っているに違いない
ふと、わたしは、
うさぎのことを思い出した。
うさぎも黒い水晶だ。
孤独を好む生き物だと、
少年のままの
左手が教えてくれた
地球上に、
たった一つしかない石が
くるくるまわりだす
西から東へ
東から西へ
そこに月をあてがえば
黒子の島が浮かんでくる
黒子の島は大きくなってわたしを呑み込む
*
洞窟だった。
目覚めた場所は
可愛かった琥珀が
ヒトガタになり
血にぬれた釘を持っている。
琥珀には目がなかった。
割れた琥珀のひとかけらから
蝶々が目をさまして
真っ赤な羽根を
血を滴らせながら飛んでいる
目のない琥珀は
笑いながらいう。
(あたし、生きているんよ。
生きているんよ。)
琥珀を舐めると
わたしからも目がなくなる。
わたしも笑いだす。
東の空が血に染まり
太陽が叫びをあげる
地球上に一つしかない石は太陽の心臓になる