あおい満月


赤くはれあがっていく
この諸手が欲しがるものは、
べっとり熱い熱
弾力の赤い海にのせて弄んで
流し込む遠い川。

くだってくだって
流れていくと
聴こえてくるのは
幾つもの赤い目と手
そのひとつと
手を繋ぐと、
見えてくるのは
静かに灯る繁華街

街は眠ったふりをしながら
新たな肉を待っている
街が牙を剥き出して
襲いかかる。
この肩は街に喰われる
通りすがる人は皆、
フォークを手に走ってくる
どの人もみな血だらけだ。
道路工事員は、
マンホールから湧き出る血を
グラスで酌み交わしている
どこかから、
救急車が走りこんでくる。
救急車の中では、
医師たちが包丁を片手に
負傷者を調理している。
赤い唇でエレジーを唄う
夜の女王の太ももに
酔っ払いはしがみつき
ながれてくる甘い蜜に酔いしれる。

この街は赤い。
いつも夜にだけ、
血の雨が降っている。
この街の喉に
吸い込まれる恍惚が
止まらない。



自由詩Copyright あおい満月 2014-08-24 14:15:02
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