「ホリック」
泉由良

ホリック



詩になりそこなった単語が脳裏でくるんくるんと廻り
バス停から自宅まで歩くあいだに3回転半で綺麗に着地を決めました
いろんなものにホリックなあたしは
青臭いトマトジュースで錠剤を流し込みながら
沈黙し続ける携帯電話を爪ではじく
ペールブルーのマニキュアが意外とすてき


言葉にホリックなのどうすればいいの
息をし始めた言葉も
わからないまま発せられない言葉も
黒い缶詰にみんな閉じ込めて
缶切りで開けたらぱあっと世界中に散らばって
最後に覗いたら希望だけありました
なんていう神話がありました
一番に散らばって欲しかったのは希望なのに


そしてあたしは人肌恋しやなホリック
誰か抱き締めて
あの日あなたがあたしの耳に吹きかけた若くて熱いあの吐息
耳が弱いのどうして知ってるの
あたしあっという間に溶けてしまったじゃないの



4時55分
夏至の頃はとっくに明るかったのに
もう立秋も過ぎた
さみしいな
夏は本当に好きよ

あたしの耳に熱い息を吹きかけたあなたも
何処か遠くで知らない大人になってしまうのかな
熱い息ホリック
もう二度と触れてはくれないと思うけど

5時1分
空が藍色になってきました
トマトジュースにはいつのまにか
ウォッカを混ぜていてブラッディメアリィ
タバスコが入っていてスパイシィ
けれどその壜が残り僅かだった
あたしの夜のように
あたしの夏のように


ホリック・ホリック・ホリック
ちいさく歌ってみました






(2007.08 晩夏)


自由詩 「ホリック」 Copyright 泉由良 2014-08-23 01:33:34
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