シチュー
あおい満月


携帯メールの送り先が
特定の3つに変わった。
欠けていった鉛筆たちは
ころころ
机から床に転げ落ちて
旅をはじめた。



交わらない
平行線も
やがて海で交わるのだろうか。
血を流してみないかい。
その誘いがなければ
この手は永遠に、
開かないドアに爪を
たて続けているだけだった。
今なら、
その爪をたてた爪から
滲み出る血を表現できる。

(きみは、箱の中にいればいいんだ)

クラシカルな響きを切り裂いた
この手に握られたナイフは、
鮮やかなエレジーを生んだ

**

大事な鍵を持っている
いつも、
遠くへいくなと言ってくれる
左手が手渡した銀の鍵。
電車は水道橋へと
くだっていく。
今ごろは、
きみも寝ているだろうか。
もしもひとつぶの
涙が聴こえたら
掛けてきて良いんだよ。
きみは、
筆を握りながら
あるいはピックを握りながら
月の階段を昇る。

ただいま、
ただいま。

きみよ、それ以上
遠くにならないでほしい。

テーブルの上で湯気を立てている
出来立てのシチューを二人でたべよう。
真っ赤なトマトのシチューを



自由詩 シチュー Copyright あおい満月 2014-08-22 21:35:01
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