肉の孔
あおい満月


爪の伸びた人差し指で
ぐりぐり
肉の孔を掘る
肉の孔に
滴る体液をこぼす

肉のあなから
何かが生えてくる
草のような、
毛のような何か。
何かは形になって
目をもちはじめる
目は海の色に青く
こちらをみている

にやりと月を描いた
唇から覗くのは
白く鋭い牙だ。
手のひらに乗せた何かは
わたしの指を噛み、
血を肉の孔のなかに盗んでいく。

肉の孔から生まれた何かは
増殖し、次々肉に孔を作る
作られた肉の塔は
ガラス張りになり
陽をうけて雲を見送る
毛のような何かはまるくなって
真昼の月の脇の下で眠っている


自由詩 肉の孔 Copyright あおい満月 2014-08-21 21:31:04
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